スマートグラスの活用入門② 部品名表示で多品種組立のミス削減
はじめに
多品種少量の組立現場では、部品の確認作業が大きな負担となります。例えば、紙のマニュアルで確認するだけでも、1点あたり数十秒のロスが生まれます。、Vuzixのスマートグラスを使えば、視界に直接ラベルが表示されます。したがって、どのパーツをどこに取り付けるべきかを両手を止めずに確認できます。これにより、組み立て作業に必要な時間が劇的に低減されます。本コラムでは、多品種少量の組立ラインにおける実際のユースケースをもとに、スマートグラスによる部品名表示を軸にした作業の流れと、ミス削減・時間短縮の仕組みを解説します。
この記事でわかること
- 製造・組立現場におけるスマートグラスの具体的な使い方
- 作業者の視界に情報がどう表示されるかのイメージ
- 多品種少量の組立ラインで、探索時間・取り違い・教育工数をどのように減らせるのか
この記事はこんな方に向けています
- 自動車部品・電装品・装置メーカーなど、多品種少量の組立ラインをお持ちの方
- 現場DX・スマートファクトリーを検討している生産技術・製造管理・品質保証部門の方
- 作業者の教育コスト・取り違い・目視検査の負荷に課題を感じている方
- Vuzix M400などのスマートグラスの具体的な現場活用イメージを知りたい方
なぜ「部品名が見えるだけ」で現場が楽になるのか
多品種少量の組立ラインでは、日常的に次のような負荷が発生しています。
- 似た形状・似た型番の部品を、ラベルや図面で照合する時間
- マニュアルやBOMの該当箇所を探し、「図2-3のR15はどこか」を目で追う時間
- 分からないたびに、新人や応援要員がベテランに聞きに行く時間
スマートグラスで部品名を視界に重ねて表示すると、下記のような効果が期待できます。
- 実物を見ながら、その場で名称と位置を同時に確認できる
- 形が似ていても、ラベルを見れば取り違えを防ぎやすい
- 「この部品がR15」「ここが電源ライン」と視覚的に共有でき、教育がしやすい
その結果、作業者は視界にある指示に従うだけで、正しい作業を実施することができます。
ユースケース:多品種組立ラインのとある一日
ここからは、電子ユニットを組み立てを例に、スマートグラスを使った作業の流れを追っていきます。

1. 必要なパーツを視界で確認する
Iさんが基板をスマートグラス越しに見ると、下記のようなラベルが表示されます。
- 「リセットボタン」
- 「Digital Pins」
- 「Microcontroller」
次に、視界に表示されるチェックリストに沿って、下のように確認しながら作業を進めます。
- 「リセットボタン 実装済み」
- 「Digital Pins はんだ付け済み」
これにより、紙の図面と実物を見比べる手間がなくなります。「どこに何があるか」を探す時間は、もう必要ありません。その代わり、実物を見ながらその場で確認して進めるスタイルへと変わります。これにより、新人や応援要員でも、ラベルの位置を見るだけで部品を特定できます。したがって、全ての名称や略号を暗記していなくても、迷いなく組立に入ることができます。
2. パーツを探す:保管場所へのナビゲーション
手元にパーツがない時は、スマートグラスで「保管場所を表示」を選びます。すると、必要な情報が即座に視界へ映し出されます。例えば、「部品棚B-3の2段目にある」といった具体的な場所がわかります。したがって、迷うことなく最短ルートで部品を取りに行くことが可能です。

その結果、Iさんは初めてのラインでも、案内に従いまっすぐ部品棚へ向かえます。したがって、「人に聞きに行く」といった手間がなくなります。さらに、「通路を行き過ぎる」などのムダな往復も減り、作業がスムーズになります。ピッキング現場でのスマートグラス活用についてのユースケースの詳細は、”スマートグラスの現場活用入門①―記憶・勘に頼る時代を卒業―スマートグラスで「探さない」ピッキングへ“もあわせてご覧ください。
3.部品名表示をさらに製造現場で応用したイメージ
3.1 組み立てる:手順を「部品に重ねて」ガイド
組立や検査工程では、部品名だけでなく作業手順も重ねて表示できます。具体的には、対象となる部品の上に、次に行うべき操作を映し出すカスタマイズが可能です。したがって、作業者は視線を外すことなく、正しい手順で作業を続けられます。
具体的には、
- 押しボタンの上に「① 電源ON」「② テスト開始」とステップを表示
- コネクタの差し込み口の上に「① 通電前に接続」「② トルク確認」といった注意事項を表示
といった構成です。
このような手順ガイドは、現場の業務フローに合わせて個別に設計します。例えば、作業者のIさんはマニュアルを読み、頭の中で位置を探す必要がありません。代わりに、視界に出る番号の順に手を動かすだけで、正確に作業を進められます。
その結果、手順抜けや間違いが大幅に減少します。さらに、新人教育も「マニュアルを読む」より「画面の通りにやる」形式にシフトできます。
3.2 応用例1: 配置エラーがあった部分を赤枠で知らせる
※当機能は標準機能として搭載されていません。カスタマイズにより実現可能な応用例です。

検査工程では、カメラ映像をもとにAIが実装状態をチェックし、
- 本来あるはずの抵抗が実装されていない
- 似た型番のICが誤って実装されている
といった異常を検知した場合、その箇所を赤い四角でハイライトすることも可能です。
例えば、Microcontroller型番が場合は、その位置が赤枠で囲まれます。同時に「型番不一致」とメッセージが表示されます。Iさんは、基板全体をじっと見て不具合箇所を探すのではなく、赤枠の位置を確認して手直しするだけで済みます。基板全体から違和感を探す「目視頼み」ではなく、指示されたポイントを確かめて修正するスタイルに切り替わることで、検査工程の負荷を抑えながら、ミスの見逃しも減らしやすくなります。
ここで紹介している赤枠でのエラー表示は、検査ロジックやAI画像認識を組み合わせたカスタマイズによる応用例であり、読者に「こういった拡張も視野に入る」というイメージを持っていただくためのものです。
3.3 応用編2:ネジの浮きなどの取り付け不備を赤枠で強調表示する
部品名を表示して迷いを減らすだけでなく、「誤りが起きた(または起きやすい)箇所」を視界上で目立たせるといった応用も技術的には可能です。たとえば、取り付け漏れ・向き違い・部品違い・ネジの緩みなど、あらかじめ定義した不備候補に対して、対象箇所を赤枠で強調し、注意内容をラベルとして重ねて表示できます。


スマートグラス越しに見た例。ネジの緩みが疑われる箇所が赤枠で示され、「loose」といった注意ラベルが重ねて表示されています。
このように、作業者は実物を見ながらその場で異常候補に気づけるため、見落としや手戻りが起きやすいポイントを早い段階で潰しやすくなります。操作は部品名表示と同様に「見る→気づく→直す」の流れで完結し、紙や端末を見に行く往復を増やさずに対応できます。
いつもの現場が、こう変わります
- 教育:新人・派遣・外国籍の方でも、視界に出る部品名ラベルと手順ガイドに従うだけで、短期間でラインに投入しやすくなります。
- 探索時間:紙マニュアルや図面をめくりながら「R15はどこか」「CN3はどのコネクタか」を探す時間が減り、実物を見ながらその場で確認して進めることができます。
- 品質:似た部品同士の取り違いや、抵抗・コネクタなどの未実装・付け忘れに気づきやすくなり、検査工程の負荷や手戻りを抑えられます。
- 標準化:熟練者のノウハウを「視界のガイド」として組み込めるため、作業者ごとのばらつきが減り、人に依存しない標準作業をつくりやすくなります。
まとめ
スマートグラスによる部品名表示は、派手な自動化設備ではありませんが、多品種少量の組立現場で日々発生している「覚える」「探す」「確かめる」時間を静かに削っていきます。 基板やユニットを見た瞬間に、必要な部品の名前・位置・役割が視界に現れ、さらに手順ガイドやエラー表示と組み合わせることで、作業者はマニュアルと実物を行き来することなく、視界の指示に従って正しく組み立てることに集中できます。
その結果、取り違いの削減や教育負荷の軽減を実現しながら、1台あたりの組立時間とライン全体のタクトタイムを縮めていくことが可能になります。
ムクイルについて
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